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大阪高等裁判所 昭和27年(ラ)93号 決定

抗告人 小林美津(仮名)

相手方 森一郎(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由の要旨は、原審判で認められた事実の内抗告人が昭和二十〇年○月頃から居村の○○○○株式会社社長田村正一と情交関係を生ずるに至りたること右田村と会合のため屡家を外にしたこと、明男の世話及財産の管理に意を用いなかつたこと、家出を企てたこと、○月○日家出をしたこと、田村を頼つて○○○○○○株式会社○○出張所へ行つたこと、依然非を改めない等の事実は全く虚構若くは著しく事実に相違せるものであつて之を真実と認定せられたことは抗告人の承服できないところであるといふにある。

然しながら本件記録中の筆頭者小林多市の戸籍謄本、原審における小林次郎、青田治、小林明男申立人森一郎審問の結果当審における小林次郎の審問の結果と原審および当審における小林美津の審問の結果の一部を綜合すれば、抗告人は昭和二十〇年○月○○日配偶者小林多市死亡後多市の先妻の子である未成年者小林明男の後見人に選任せられた者であるが、かねて懇意にしていた居村の○○○○株式会社社長田村正一がその妻と死別するや、昭和二十〇年○月頃から同人と情交関係を結ぶに至り居村間において兎角の風評が流布せられたので親族間においても体面上之を問題にして同人と絶縁するよう忠告したに拘らず依然田村との関係を続け、田村と会合するため屡々家を外にし被後見人たる明男の身上の世話や財産の管理に意を用いず、自然明男との間にも感情の阻隔を来し家庭内に風波を生ずるに至つたため、昭和二十〇年○月○日夜実子である一子、政一の両名を伴つて家出し右田村正一を頼つて○○○○株式会社○○出張所に赴くに至つたこと、其後同年○月○○○日小林方に戻つて来たけれど依然巳の非を改めるに至らなかつたことと認めることができる以上の事実に依れば抗告人は民法第八百四十五条の後見人にその任務に適しない事由があるときに該当するものと認むるを相当とするから原審が未成年者小林明男の後見人たることを解任したのは正当であつて本件抗告は理由がない。

よつて主文の通り決定する。

(裁判長裁判官 三吉信隆 裁判官 藤田弥太郎 裁判官 小野田常太郎)

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